介護保険が壊される。負担増と給付減-2

保健給付の対象は中重度者(要介護3~5)に限定する。
保健給付は介護行為そのものに限定

-この骨太の方針は社会福祉としての介護を矮小化しています。
福祉労働者が提供する介護は単純に「オムツを替える」「更衣をさせる」「排泄を支援」「移乗をさせる」という物ではありません。
利用者との感情的な交流を交え、その人の意欲を刺激し、出来る事を増やしていきます。
 好例として紹介したいのは山口県発のデイサービスセンター「夢のみずうみ村」です。そこでの介護は介護労働の力を如実に示しています。
 このデイサービスセンターのプログラムは「~してあげる」「~をさせる」は一切ありません。自己選択と自己決定です。ここのスタッフの仕事はその決定のお手伝いが重要な位置を示していると思います。利用者がどうしたい。どう過ごしたいのかを決めることができれば利用者は主体としてデイサービスで一日を過ごします。強制されたものでは無いから楽しく過ごせます。
 意欲に裏付けられたプログラムの利用は、利用者の機能を心からも身体からも持ち上げることができます。
 わたしたちが見学をした場面をご紹介します。
 夢のみずうみ村のプログラムに「パンを作る」というものがありました。 
 それも本格的なものです。
 生地をこねる。オーブンで焼くという本格的な作業を利用者の方は行います。
 片麻痺のある方も立位で生地をこねます。
 立位をとる、力一杯片手で生地をこねる、この作業は立位訓練でもあり筋力強化にも結びついています。そして出来上がったパンを持ち帰りお孫さんが美味しく食べる。
 するとおばあちゃん、孫のよろこぶ顔を見るために「またがんばろう」となります。
 わたしたちの事務所のやっているホームヘルプも同様です。介護だけを提供しているわけではありません。介護をやりながらその人の意欲を引き出したり、その家固有の問題を見つけ出し家族と調整をするなど様々な役割を持っています。
 あるご家庭ではお子さんの持つ特性がが「虐待」を引き起こしていました。
 ヘルパーはその行動が何故起こっているのかを見抜き、家族の問題行動を軽減するために援助チームに問題提起を続けました。
 その結果この家での「虐待」は以前に比して沈静化しました。その結果お子さんと二人での生活が維持出来ているのです。
 また、骨太方針は「生活支援」を軽んじています。
 生活支援も利用者の意欲を刺激し、「自分でやってみよう」「ヘルパーさんに買ってきてもらうものを相談して買ってきてもらおう」「その材料でこんな美味しいものを作ろうかなぁ」となり、機能の低下を防げるんです。
 骨太方針はそういう介護の本質を見ていません。軽度者への介護サービスは重度化を防ぐ大切なものであることが分かっていません。